「iPhoneアプリケーション開発ガイド」を読んでの感想
発売前から気になっていた、「iPhoneアプリケーション開発ガイド ―HTML+CSS+JavaScript による開発手法」というiPhoneアプリ開発本。
Amazonでは、発売日から売れ切れ状態。
8/17現在でも、開発関係のジャンルでは1位総なめ状態となっている人気ぶり。
何件か書店をまわっても売っておらず、先日たまたま遊びに行ったところの本屋にて発見し、購入することができたので、レビューしたいと思います。
これから購入を考えている人の参考にでもなれば幸いです。
iPhoneアプリ開発の新たな選択肢
本書は、iPhoneアプリの開発言語であるObject-Cを使用せず、HTML、CSS、JavaScriptや、ライブラリ、ツール等を駆使してApp Store公開までの道のりを解説するという型破りな内容で、オライリー本にしては斬新な切り口で構成された、非常に濃い内容のものとなっている。
正直なところ、読むまでは、HTML+CSS+JavaScriptでできる限界はある程度わかっていたし、それなりの期待値ではあったが、読み終えてみて、その期待値は明らかに超えられていたと実感することができた。
つまりは、自分が想像していた「限界」としていたことを可能にする方法があるということを、この本を通じて知ることができたということだ。
これは後述したいと思う。
開発コストを最小限にするという提案
構成としては、ベースとなるWebアプリケーションの開発から入り、数々の手法を加えていきながら、ネイティブアプリケーションに近づけていくという流れになっているが、少なくとも、iPhoneアプリ開発ではじめにぶつかる以下の問題は避けられることとなる。
- Objective-Cの取得。
- 開発を行うにあたって、Intel MacとMac OS X(Lepard以上)を用意。※
- Windowsマシンしか触ったことがない場合、Macの操作に慣れることへの要する時間。
※厳密には、最終的にMacマシンは必要となるが、開発完了近辺までは、Macで作業する場面はない。
これだけでも、時間という面での開発コストと、設備投資(初期投資)という面での開発コストは両方とも大幅に削減される。
これらのメリットは極めて大きいと思われる。
Webアプリケーションベースにすることによるリスク管理
実は、ネイティブアプリケーションよりも、Webアプリケーションベースで開発することによって生まれるメリットもそれなりにある。
最もそれを感じられると思ったのは、例えば、万が一App Storeで審査が通らなかった場合であっても、Webアプリケーションでは最悪Web上に公開することによって、今までの努力を水の泡にするという結末がないということだ。
ネイティブアプリケーションでは、ユーザに使用してもらう手段は、App Storeを通じてダウンロードしてもらうことしかないため、もしもApp Storeに公開されないということになれば、他に使用してもらえる手段はない。
これは非常にリスクを伴うことである。
コストだけでなく、リスクも同時に最小限にとどめられる手段。
Webアプリケーションベースならではのメリットだ。
Webアプリケーションベースではできない機能を実現させる
ただ、当然メリットだけではない。
デメリットも存在する。
Webアプリケーションでは、GPSや加速度センサーなど、iPhoneのハードウェアに関連する部分にはアクセスできない。
アラートの表示のされ方なども、ネイティブアプリケーションとWebアプリケーションでは見栄えが異なり、ネイティブアプリケーションの方が自由に表示できる。
前述した「限界」はここにあり、その部分に関しては仕様上仕方のないことだと割り切って読んでいたのだが、実はこれらを実現する方法はあって、それは数々のツールが出揃った今だからこそなせる技であった。
そういったWebアプリケーションという枠を超えたものを開発できる手段と方法が、本書では紹介されている。
モバイルWebアプリケーションの進化
読み終えて最初に感じたのは、モバイルのWebアプリケーションも、PC同様進化し続けているということ。
ネイティブアプリケーションにしない状態であっても、オフラインで実行されるために工夫された仕様や、クライアントサイドストレージなど、これらはPCで実行できるものにも負けじと実装され、実用できる状態にある。
スマートフォンならではの性能や自由度の恩恵といえる。
これは携帯ではできることではない。
もう、モバイルとPCという境界は、なくなっている、というか、いらなくなっているのかもしれない。
208ページに凝縮されているノウハウ
本書は、208ページと、決して厚いものではない。
ただ、この中には、様々なノウハウが凝縮されている。
例えば、App Storeへの公開手順なども、しっかりと解説されている。
これが倍のページ数であったならば別に驚きはしないと思うが、このページ数で、ここまで様々な情報が蓄積されているというのは、やはりまとめ方がうまいということなのだろうか。
流れるように読むことができ、読んだ後の満足度は高い。
結果、208ページという長さは非常にちょうどよく感じられる。
価格も2千円でお釣りがくるというお手頃さ。
おすすめです。